米で規制強化「トランス脂肪酸」の現状は?
マーガリンや調理油、洋菓子などに含まれ心筋梗塞などの危険を高めるとされる「トランス脂肪酸」。一時期、日本でも話題となったのを覚えている人も多いのでは? そのトランス脂肪酸について、11月にアメリカ食品医薬品局が使用を段階的に制限することを発表しました。トランス脂肪酸の現状と対策について見てみましょう。
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸と呼ばれる脂質の一種。脂質自体は必要な栄養素ですが、トランス脂肪酸は血液中の「悪玉コレステロール」を増やして、「善玉コレステロール」を減らす作用があるのです。このため、動脈硬化による心筋梗塞などの危険性を高めるとされています。
牛や羊の胃などで自然にできるものもありますが、大半は植物油を高温にして臭いを取り除いたり、マーガリンなどの製造時に植物油に水素を加えたりする加工過程で作られるもの。このうちアメリカで規制が強まるのは、常温で固まりやすくした「硬化油」と呼ばれるタイプです。
アメリカの調査によると、食事で摂取したエネルギー量に占めるトランス脂肪酸の割合が2.8%に達する人は、1.3%の人に比べて心筋梗塞のリスクが1.3倍に高まるとか。ただし、動物が作る天然のトランス脂肪酸はリスクを高めません。
デンマークやスイスは、油脂100gに含まれるトランス脂肪酸を2g未満にする規制を実施。アメリカでは含有量の表示を義務づけています。しかし、日本にはトランス脂肪酸に関する使用規制はとくにありません。
とはいえ、日本のトランス脂肪酸の摂取量は欧米に比べて少ない傾向。2006年度の食品安全委員会の推計では、日本人の平均的な摂取量は1日0.7gで、総エネルギー量の0.3%。米国の2.6%に比べて少なく、世界保健機関が目標としている1%未満の基準も下回っています。
さらに、10年近く前に問題視されてから、メーカーや外食産業はトランス脂肪酸を減らす取り組みを始めました。食品安全委員会の2010年度の調査では、2006年度に比べて一般向けマーガリンで47%、業務用では91%、トランス脂肪酸が減少。2012年の評価書では「通常の食生活では健康への影響は小さい」としています。
ただし、評価書でも「脂質に偏った食事をしている人は留意が必要」とされるように、一部にはトランス脂肪酸を多くとっている場合も…。国内の20歳前後の女性を対象にした調査では、1日の摂取量が総エネルギー量の1.5%に達する例もありました。フライドポテトや菓子パンなど、含有量の多い食品を口にする機会が多かったためと見られます。