NHKがスクランブル化に積極的になれない裏事情
NHKのスクランブル化は、地デジについてはRMPという仕組みが導入されているため、現状は実施できない事情があります。一方、BS放送については、NHKがその気になればスクランブル化することは可能です。ただし、NHKには公共放送としての立場上、スクランブル化を導入できない別の事情があるのでした。
目次
NHKスクランブル化は公共放送に反する
4K・8Kを含むBS放送を受信するテレビやレコーダーにはB-CASやそれを発展させたACASが搭載されています。そのため、現状NHKがその気になればBS放送では、技術的には受信料を支払っている人だけ視聴できるスクランブル化を導入することが可能です。
それでも、NHKがスクランブル化に消極的な理由は、NHKが「公共放送」だという点にあります。放送法で、NHKの役割は「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行う」と定められています。
この公共放送としてのNHKの役割を実現するため、テレビ放送を受信できる視聴者すべてがNHKと受信契約を結び、受信料を支払うことでNHKの運営コストを共同で負担する、というのが放送法の趣旨です。つまり、NHKのテレビ放送をまったく見ないテレビ所有者も、NHKと受信契約を結ぶ必要があります。
NHKがスクランブル化に消極的な理由
一方、NHKが受信契約者だけが視聴できるようにスクランブル化を実施した場合、放送法の原則が崩れてしまいます。というのも、放送法ではNHKのテレビ放送を受信できる設備を設置した人はNHKと受信契約を結ぶ必要があると定めているため、スクランブルを解除しない状態ではNHK受信契約が不要ということになるのです。
とはいえ、NHKのBS放送については、地デジだけの視聴で十分なのにマンションがBS放送を再送信しているため衛星契約を結ばされる、いわゆる「受動受信」が問題視されています。
そのため、公共放送という立場上、NHKは地上波をスクランブル化できないにしても、アンテナ設置の有無で契約が左右されるBS放送については、スクランブル化を導入すべきという意見も少なくないのです。
とはいえ、NHKがBS放送をスクランブル化してしまうと「見ないから」と契約をしない人が続出して、衛星契約のNHK受信料が激減するのが目に見えています。だからこそ、NHKはスクランブル化に積極的になれないのでした。