アトピーに効くプロアクティブ療法のやり方
アトピー性皮膚炎の治療で、ステロイド薬で皮膚をきれいにしたあとも、一定の間隔で薬を使う手法が注目されています。それが、症状が出ていないときも先手を打って薬を使う治療法「プロアクティブ療法」です。近年、アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法の効果について国内外で報告が相次いでいます。
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アトピーにプロアクティブ療法
アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹がよくなったり悪くなったりを繰り返す慢性の病気。従来、湿疹が出たときに薬を使う治療法が一般的でした。最近、注目されているのは、症状が出ていないときも先手を打って薬を使う治療法「プロアクティブ療法」です。
中程度以上のアトピー性皮膚炎ではまずステロイド薬を十分に使い、皮膚をつるつるにします。そのあと、保湿剤を塗りながら、ステロイド薬や免疫抑制剤のタクロリムス軟膏を使い、少しずつ間隔をあけていくのです。湿疹が再び出れば、その部分は早めに薬を使うようにします。
浜松医科大病院は「重いアトピー性皮膚炎の場合、皮膚がつるつるになったように見えても内部では炎症が残っている。薬を一定の間隔で使うことで、症状が出ない寛解状態を長く保つことが期待できる」と話します。
プロアクティブ療法はステロイド薬
生後4ヶ月から顔やひじ、ひざにアトピー性皮膚炎が出たある男児(7)は、まず毎日ステロイド薬を塗ると肌は2週間ほどでつるつるになりました。しかし、治療はこれで終わりではありません。そのあとは薬を週3回の間隔で塗り、数ヶ月おきに2回、1回と減らしていったのです。治療開始から1年4ヶ月後には薬をやめ、保湿剤のみになりました。
イギリスなどで295人の患者を対象に、ステロイド薬で症状が治まったあとに保湿剤と薬を週2日塗り続ける人と、保湿剤のみを続ける人に分けて4ヶ月状態を観察。この結果、保湿剤だけの人は7割が症状がぶり返して再発しましたが、薬を塗った人の再発は2割でした。研究中に皮膚が薄くなるなどの副作用も出ませんでした。
国立成育医療研究センターによると、プロアクティブ療法は従来法に比べ「再発までの期間が長い」「再発しても早く治る」「薬の総使用量が少なくてすむ」などの報告があるといいます。ただし、ステロイド薬への不信感から薬を十分に使わない患者が多いのが現状。東京逓信病院は「治療がうまくいかない患者の7~8割は薬の量が不十分だ」と話します。
ステロイド薬を使う量の目安
ステロイド薬を使う量の目安として、指に薬をのせた量を目安にする「フィンガーティップユニット」という単位が提唱されています。
ステロイド薬には、皮膚が薄くなったり、血管が拡張したりする副作用がありますが、皮膚が黒ずんだり厚くなったりする心配はありません。治療中に副作用が出た場合は連日塗るのをやめ、タクロリムス軟膏への切り替えや塗る間隔をあけます。正しい量と頻度で使えば、長期間使用しても全身に重い副作用は出ません。
国立成育医療研究センターは「プロアクティブ療法がうまくいけば、半年~1年ほどで薬を使わない状態になる人もいる。ただし重症度は個人差が大きいので自己判断で薬をやめず、医師と相談して副作用をコントロールしながら治療を続けて欲しい」とコメントしています。