肝臓の位置を知らないために肝臓がんが増加!?
さまざまながんの中でも、とくに注意が必要なものがあるのを知っていますか? それは「肝臓がん」です。たとえば肝臓の位置といわれて、答えられる人は少ないはず。そんな肝臓に対する認識不足が、肝臓がんを増加させている1つの原因といえるかもしれません。9月16日放送『みんなの家庭の医学』の「長引く不調を解消!3つの新事実SP」で紹介されていました。
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肝臓の位置はお腹の右上あたりが正解
1970年には1万に届かなかった肝臓がんによる死亡者数は年々増加。ここ20年は毎年3万人を超え続けています。現在では、肺がん・胃がん・大腸がんに続いて、4番目に死亡者の多いがんとなり、要注意のがんとされているのです。
その大きな要因の1つが、肝臓が意外と知られていない臓器だということ。たとえば肝臓の位置といわれて、正確に答えられる人は少ないでしょう。正解はお腹の右上あたりになります。
肝臓の位置を詳しく説明するなら、ちょうど胃の右隣です。横隔膜の下あたりにあるため、肋骨の下に収まっています。
じつは、臓器の中でもっとも大きいのが肝臓。その重さはじつに、体重のおよそ2%。体重50kgであれば「1kg」にもなるのです。女性よりも男性のほうがさらに大きい傾向になります。
肝臓は痛みを訴えない沈黙の臓器
そして、その仕事量は膨大です。栄養素を分解してエネルギーに作り変えると同時に、体内に取り込まれた有害物質を解毒しています。肝臓は一大化学工場にたとえられます。
なかでも、アルコールの分解は肝臓の大切な仕事の1つ。しかし、お酒を飲みすぎると肝臓は限界を超え、肝細胞が炎症をおこす肝炎となってしまうのです。
しかし働き者の肝臓は、どんなに辛くても痛みを訴えない沈黙の臓器。そのため知らず知らずのうちに肝炎が悪化し、気がつけば肝硬変や肝臓がんに進行します。こうして命を脅かすことになるのです。
脂肪肝による肝臓疾患も増えている
最近では、お酒の飲みすぎが原因でない肝臓疾患が増えています。それが「非アルコール性脂肪肝炎」、別名「NASH(ナッシュ)」で、その原因は「脂肪肝」です。
肝臓に大量の脂肪が入り込んで脂肪肝になると、エネルギーを作り出す役目を持つ肝臓の細胞内のミトコンドリアが巨大化して機能不全に…。細胞自体も死んでしまって肝炎になります。これがさらに悪化すると肝硬変になり、最悪の場合は肝臓がんへと進行することがわかってきたのです。
脂肪肝を防ぐには食事に気をつけ、適度な運動をすること。また肝臓は睡眠中に、心臓を動かすためのエネルギーを脂肪から作り出しています。このため早寝をすると、肝臓の脂肪が燃焼しやすくするのです。
肝臓がんの増殖を食い止める方法
東京都医学総合研究所は、肝臓がんが「生体防御システム」と「オートファジー(自食作用)」を利用して増殖していることを発見しました。仕組みの一部を食い止めることができれば、肝臓がんの新しい治療につながることがが期待されます。
「オートファジー」は、機能を失った異常ミトコンドリアや細胞内に侵入した細菌を取り囲んで、内容物を自ら消化・分解してアミノ酸を供給する仕組みです。細胞内に生じた毒性のある細菌を排除し、細胞の恒常性維持を担っています。一方の「生体防御システム」は、ストレスに応答して生体防御遺伝子群をを活性化する仕組みです。
今回の研究では、肝臓がんの細胞でたんぱく質「p62」がたまりやすいことに着目しました。正常な細胞では「p62」がきっかけとなり「生体防御システム」と「オートファジー」を発動。その過程で「p62」はオートファジーで常に分解されます。
しかし、肝臓がん患者の場合、この「p62」が持続的に活性化されていたのです。肝臓がんの細胞は、オートファジーをうまく調節して「p62」をたまりやすくすることで、増殖しやすい性質を獲得していると考えられるというわけ。しかも、肝がん細胞の「p62」の活性化を抑制すると、がんの増殖が著しく抑制されたのです。
この「p62」を標的とした化合物が新しい抗がん剤の候補になることが期待されます。現在、創薬オープンイノベーションセンター保有の化合物を用い化合物スクリーニングを行っています。
■9月16日放送『みんなの家庭の医学』
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